交差
こんばんは。池田です。
展示会真っ只中のため、『はなし -diary-』の更新頻度が下がってしまっています。
書かないと、とは思いつつ、オーダーの締切もあるのでなかなか手が回らず。
どれだけの方に見ていただけているのかはわかりませんが、なんとか更新頻度高くしていこうと思う次第です。
とは言うものの、24SSのオーダーに頭を悩まされる毎日という現実。
使える金額に制限さえなければ全アイテムをオーダーしたいところですが、もちろんそんなわけにもいかず。
オーダーしたい気持ちとお金という現実的な問題が交差して、悩みに悩んでいる今日この頃。
10ブランド程度でそう言っている僕ですが、その倍以上のブランドをセレクトしているショップのバイヤーの方なんて、更に頭を悩ませているんでしょうね。
独立してからは、そんな業界の先輩たちには尊敬の念と、自分もそうならねば、という気持ちが交差し、日々邁進している所存です。
夢と現実が交差してしまう世知辛い世の中だな、なんて考えながら、本日は今季からお取り扱いが始まったMAHITO MOTOYOSHIのシルク泥染のアイテムたちのご紹介を。
着たいという欲と、お金という現実問題が交差しつつも、着たくなってしまうアイテムたちかと。
まずはブランドのコンセプトと今季のテーマを。
僕がとやかくご説明するよりも、そのまま引用した方がわかりやすいので、そのまま失礼します。
【brand concept】
ー文化が交差する服ー
今ある美しい文化は様々なものが、相互作用し合い作られており、形は変われど全て繋がっています。
服を通し文化、思想、伝統が入り混じることで、現代における民族服を探求します。
【23AW theme】
"Shangri-la"
小説「失われた地平線」に登場するチベットの奥地にある西洋の技術文明と東洋古来の精神文化が組み合わさった架空の理想郷シャングリ•ラ。
西洋的な進歩主義と近代合理主義から生まれた大衆消費社会へのアンチテーゼであり、自然の摂理こそ最大の原理であるという東洋思想の根本的な哲学は今最も必要だと考えた。
といったところです。
それではアイテムのご紹介を。
まず目を見張るのは、この独特な生地感でしょうか。
一見すると禍々しさのようなものを感じてしまいますかね。
もちろん禍々しくはないですが、拙さ溢れる僕にはこの感情をどう表現すれば良いのかわからないので、とにかく非常に独特だということで。
泥染めでこんな生地に仕上がるのか、という驚きとともに、使われている生地がシルク100%という驚きも。
シルク100%に泥染なんて贅沢をしているのにこの金額、というまたまた驚きも。
驚きずくめですね。
そんな泥染は中国広東省の香雲紗という伝統的な染色技法が使われており、天然のソメモノイモの汁と地元の川の泥で染色されています。
ただ染色するだけでなく、染色後に外に天干しすることでひび割れた様な非常に独特な生地感に。
どこか斑模様のような雰囲気も感じさせるでしょうか。
ちなみに香雲紗という染色技法は中国の国家級無形文化遺産に登録されている希少な生地みたいです。
”国家級無形文化遺産”という単語だけでもわくわくしてしまう自分がいます。
どうでも良いですね。
泥染による独特な色味はもちろんなのですが、質感という面でも非常に独特なんですよね。
触ってみると、ハリのある生地感と、ぶるんとキックバックがある生地感が交差したかのような、なんとも表現のし難い生地感。
これは実際に触れてみていただきたいですね。
僕だけの可能性もありますが、なんだか不思議な感覚を抱きつつ、だんだんと病みつきになる唯一無二な感覚を抱いてしまいました。
そんな独特な泥染シルクを使用したコートとシャツ。
コートは薄く中綿が入れられたステンカラーです。
ゆったりとしたシルエットで、ぱっと見た印象はシンプルなステンカラーに見えますが、袖付けが非常に特徴的。
通常は筒状に袖付けされますが、そうではなく、直線が交差するような袖付けになっています。
わかりづらい画像ですみません。
そうすることでどこか和服のような雰囲気も感じられるでしょうか。
和服のような要素、香雲紗による生地、日本と中国の伝統が交差した1着に仕上がっていますね。
一方のシャツはプルオーバー型。
こちらもゆったりとしたシルエットです。
ハリのある生地感でゆったりとしているため、すとんと落ちるようなシルエットではありません。
主張が強めな生地感と、抜けも感じる程良くゆったりとしたシルエットが交差しているような、非常に良い塩梅の仕上がりですね。
コートと比較すると泥染のひびがやや少なめなので、より着やすい塩梅の色味かもしれません。
真夏以外の3シーズンは着られると思うので、レイヤードを楽しみつつ着ていただければ。
交差することで良い方向にいく場合と、悪い方向にいってしまう場合があるんだろうな、なんて考えさせられるアイテムたち。
様々な要素が交差することによって引き立ったMAHITO MOTOYOSHIの泥染シルクのアイテムたちを是非。
池田